アビタ戸祭(岩下泰三氏,更田邦彦氏との共同設計、SDレビュー1999入選作品、東京建築士会住宅建築賞)

1つの敷地に1つの建物、それが平面的に脈絡なく繰り返される戸建住宅地の風景は、 多種多様な家族が集合的かつ自律的に住まうための<それなりによくできた>システムを映し出している。 本計画は、都市環境をタテに分割するこうした戸建形式の上に、ヨコに展開する空間形式を挿入させることで、 建物相互の関係性の中で獲得される豊かな住環境への新たなシステムを提案するものである。
場所は宇都宮市中心街の西方にひろがる低層住宅地の真ん中に位置している。既存樹木が散在する約1000平方メートルの敷地に、 4つの独立専用住宅を建設する。まず、地面から約2.7メートルの高さに、1枚の人工地盤すなわちプラットフォームを、 既存の樹木をできるだけ残しながら敷地全体にわたって設置する。さらにこのプラットフォームの上に、 4つの小さな建物(構造上1階の部分と分離した木造建物)を互いに距離をあけながら配置する。 これらの建物によって区切られた屋外エリアは、それぞれ各住戸専用のオープンテラスに対応している。 1階は、各住戸すべて北側プラットフォーム下に玄関と2台以上の駐車スペースがあり、さらに階段に沿って2つのパティオがある。 2階オープンテラスと1階パティオは、各住戸のプライバシーを保つための機能をもつとともに、コモンエリアとしての共有化が可能なように、 空間的・動線的に住戸相互に連続性をもたせている。

プロジェクト名:アビタ戸祭(とまつり)
建築用途:戸建賃貸住宅4棟(将来分譲可)
所在地:栃木県宇都宮市戸祭2-11
工事期間:1999.8〜 2000.2
主体構造:1階鉄骨造、2階木造
敷地面積:999.47m2(位置指定道路127.85m2を含む)
建築面積:384.08m2(一戸あたり約96m2)
延床面積: 563.91m2(一戸あたり約141m2)
外部仕上
ガルバリウム鋼板(2階妻壁および屋根)、網入ガラス(2階平壁)、ALC板(1階外壁)、イぺ(2階テラス床)、 解体廃材(2階テラス手摺および駐車スペース床)、廃材瓦(犬走り)ほか

内部仕上
コルクタイル(床)、ビニルクロス(壁および天井)ほか